ことり
IRの裏話シリーズも4話目に突入です~✿
ここまで、東証1部上場企業のIR担当で働いていた経験をもとに、株主優待の話を中心に記事を書いてきました。
今回は、少し流れを変えて、投資家のバイブルとも呼ばれる「四季報」の記者さんから取材を受けたときのエピソードをご紹介したいと思います。
カラス
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というわけで、引き続き口の悪いカラスにも登場してもらいます。
みなさん、四季報ってチェックしてますか?四季報の記者さんがどんなふうに取材をしているのか、四季報と会社には特別な関係があるのか、企業のIRからの視点でお話しします。
読んでるよ!って人も、まだ読んだことが無いって人も、あらためて四季報を読んでみたくなるおすすめ活用法もご紹介します。
この記事はあくまで裏話であって、会社公式のものではありません。ですので、「どの会社のことかな?」など詮索することはご遠慮ください。
四季報はとにかくすごい
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株式投資における四季報とは、東洋経済新報社が発行している「会社四季報」のことを言います。会社の決算発表のシーズンに合わせて、年4回、新春号・春号・夏号・秋号が発行されています。
日本の証券市場に上場しているすべての会社のデータを網羅していて、業績や資産状況、様々な指標を掲載しているだけでなく、独自の業績予想も掲載しており、投資家たちのバイブルとも呼ばれています。
こんな感じの専門情報誌なんですが、その歴史や取材力から業界で唯一無二の存在になっています。
証券会社やアナリストなどの機関投資家でも活用している人が多いそうです。
そんな四季報ですが、当時IR担当だった私は、その「取材力」と「分析力」にものすごく感銘を受けていました。
全ての会社に対してしっかり分析されているのが伝わる取材内容、四季報オリジナルでありながら定評のある業績予想は必見です。
こんな手間のかかることを、すべての上場企業に対して行っているのは四季報くらいですからねぇ。ほんとすごい。
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IR担当は四季報が無料で読み放題!?
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上場企業なので、さも当たり前かのように、本棚には「会社四季報」が置かれていました。しかも最新のやつ。しかも大きいサイズとミニサイズの2冊。
IR担当になったばかりの頃は「さすが上場企業だな~」なんて思っていたんですが、すぐにそうではないことを知りました。
なんと、東洋経済から最新号の発行に合わせて、四季報が勝手に送られてくるではないか!(大きいサイズのやつ)
さらに、主幹事の証券会社からも送られてくるではないか!(証券会社名が記載されたミニサイズ)
なんてこったい!
IR担当は、四季報の最新号を無料で読み放題なのか!
もちろん、東洋経済もボランティアで送ってきているわけではなくて、御社を取材・分析した内容を、今回はこんなふうに掲載してますよ~って報告も兼ねてなんでしょうね。
証券会社はお付き合いで色々送ってきてくれるので、それの一環なんでしょう。
そんなわけで、IR担当をやってたときは半強制的に四季報を読んでました。
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四季報からの取材は5分で終了
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四季報さんからの取材依頼は、定期的にやってきます。
だいたい、最新号の発刊前の時期に電話がかかってくる感じだったので、3ヵ月に1回のペースで取材を受けてたことになりますね。
で、1回あたり5分くらいの電話で終わり。
最初のころは、取材を受けた私の方が「え、もういいの?」って思っちゃいました。
なぜそんなに短い時間で取材が終わってしまうのかと言うと、担当者さんがめちゃくちゃ分析しているから、ほとんど確認作業で終わってしまうんです。
私がIR担当をやっていたときは、ずっと同じ記者が当社を担当してくださっていました。
その方が、当社を含め何社分の記事を担当していたのかは分かりません。もしかしたら、すごく忙しいだけなのかもしれません。
でも、会話からにじみ出る「御社の決算書は隅々まで読みました」「事業内容もバッチリ理解しています」「めちゃくちゃ分析してます」感はヤバかった…。
IR担当だった当時には、四季報さん以外にもたくさんの証券会社やアナリストの方、株式雑誌の方などの取材対応をさせていただきましたが、ダントツで当社のことを理解してくれていたように感じます。
四季報記者とIR担当との会話はこんな感じ
実際に四季報の記者の方との会話は、下記のような感じでした。
IR担当としては、発表している事実以上のことは言えないため、ふわっとした返答になってますが、私の心の声と共にどうぞw
四季報「前回の決算短信で○○って書かれてましたけど、△△が◆◆って感じですか?」
私「そのとおりです。」
(よく読んでるな~)
四季報「じゃあ、業績がすごい上がってくってよりは、しばらくこのペースが続く感じなんですかね?」
私「先の話はなんともいえませんが、このペースを継続できるように計画しています」
(将来のことについて断言はできないけど、そのとおりだよ~)
四季報「そうなんですね。来期の業績予想××万円で出してますけど、★★万円くらいも見えてますかね?」
私「それくらいはあるかもしれません」
(それくらいの決算の見通しはあるけど、業績予想を変更するほどの確証はまだないから会社としては何とも言えないな~。慎重に様子を見ているとこだけど、★★万円ってかなり良い線だな~)
四季報「分かりました~。じゃあ★★万円って書いときますね~。ありがとうございました~。」
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うちのビジネスモデルを理解してくれて、公表している資料や決算短信をちゃんと読んでもらえれば、大体は分かってもらえるはずなんだよね。
私が把握しているだけでも、四季報の記者さんはIR資料も決算短信も四半期報告書・有価証券報告書も全部読み込んでるっぽかったし、機関投資家向けの説明会にも毎回参加してくれていました。
その努力があるからこそ、取材がめちゃくちゃスムーズなんですよ。5分で終わるのも納得ですよね。
もちろん、毎回5分で終わっていたわけじゃなくて、何かIRニュースやトピックスがあったときには、もう少し詳しく取材を受けたこともありました。
それでも、独自にしっかり予習してくれているので、どのタイミングの取材だったとしても、とにかく会話がスムーズなんですよ。
こんな取材が毎回だったので、私の中で「四季報の記者スゴイ」って印象がものすごくあります。
他社でIRに取材に来る方って、その時点での記事やアナリストレポートを作成するだけだったりするから、長年継続的に取材に来てくれる人はほとんどいません。(当社があまり魅力的な銘柄ではなかったのかもしれないけどw)
その点、四季報は長い間ず~っと分析し続けてくれているので、さすがだなぁ~と感心してしまいます。
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初心者におすすめの四季報の活用法
でも、あの分厚さとか、文字の小ささを見ると、どこをどう見たらいいのか…。
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ではでは、まだ四季報を読んだことないよ、活用できてないよって方に、ことりおすすめの活用法を伝授しましょう~
1.全部読もうとしない
四季報にとっつきにくさを感じる人って、あの情報量に圧倒されちゃってると思うんですよ。
でも、四季報の使い方って、人それぞれ。
気になる銘柄をチェックする、基準にしている指標だけをひたすら見ていく、数字には目もくれず記事コメントを楽しむ、などなど…
長く投資を続けている人ほど、自分自身の四季報スタイルを持たれています。
そして、その中で共通するのは「四季報を全て読んでいるわけではない」ということ。
せっかく購入したから全部読まきゃ…って意気込む人もいるかもしれませんが、そんなことしてたら、いくら時間があっても足りません。
まずは、ある程度知識のある「保有している銘柄」の欄に、どんなことが書かれているのかチェックしてみると読みやすいと思います。
2.記事コメントを読む
四季報ならではの「記事コメント」欄は、初心者でも読みやすいし、実はかなり有益な情報が隠れているのでぜひチェックしてみてください。ここにこそ、記者のセンスが詰まっています。
基本的には①業績のポイント、②その他トピックス、の2部構成で書かれています。
直近の決算発表の内容から重要なポイントをピックアップして、短くまとめてくれています。決算短信が読めない人でも、四季報のコメント欄を抑えておけば、なんとなくの雰囲気はつかめるはず。
ちなみに、記事コメントの頭についている【すみかっこ】の文字は要注目!四季報記者が取材・分析で感じた気持ちがハッキリと表れています。
【増益】【上振れ】などポジティブな言葉が書かれている銘柄もあれば、逆に【減益】【後退】などネガティブな言葉が書かれている銘柄もあって、こちらは注意が必要です。
また、【戦略】【新領域】など、業績以外の話題のときは、なぜその話題を取り上げたのか?業績へのインパクトが大きいということなのか?と分析のきっかけになりますよ。
3.会社予想と四季報予想を比べてみる
会社が発表している業績予想は、会社によって強気だったり、保守的だったりします。
そこを、現実的に第三者の視点で予測しているのが四季報です。
今どきは、ネットの普及もあって、いろんなアナリストの予測を知ることもできますが、誰の予測を信頼していいのかが判断しづらいなと感じています。
その点、四季報の記者は、独自取材や長年の分析でかなりリアルに近い数字を算定しているはず。参考にして損はないと思いますよ。
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4.継続的にチェックする
四季報の価値って、同じ視点で作られたデータを継続的に見ていけるところだと思うんですね。
だから、新しく株を買うときだけじゃなくって、買った後も継続してチェックしていけるのが理想的です。
そうすれば「最近、弱気なコメントが続いてきたな?」とか「あれ、もしかして業績ちょっとやばいのかな?」なんて雰囲気も察知できるかもしれないし。
決算短信や有価証券報告書などを独自に読み解けない人は、四季報をチェックするだけでサクッと分析が終わっちゃうので、かなり効率的だと思います。
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四季報について本音を言うと…
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四季報の独自予想だとしても、投資家からは「これくらいの業績になるんでしょ?」ってほぼ確信的な情報に思われちゃうのよ。
で、実際の数字が大きく違ったりしたら、変な問い合わせも増えるし、変な取材も増えるし…。はぁ…。
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今回はこの辺でおしまいです。
私自身、現在はいろいろな銘柄を保有していますが、四季報は必ずチェックしています。
購入を検討している銘柄の参考情報として活用したり。
いざ新規購入するときには最新の四季報をチェックして、弱気なコメントが書かれていたら購入をやめたり。
売り時を検討するときに、これからの業績に期待できそうなコメントが書かれていたら様子を見たり。
今は、四季報をわざわざ買わなくても、口座がある証券会社のホームページから無料で閲覧できるところも多いと思います。(私が利用している楽天証券とマネックス証券は、無料で見れます。)
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もし、他にも気になることがあれば、記事下のコメント欄やTwitterからお気軽にどうぞ。ご質問や感想など大歓迎です!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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