ことり
私は以前、東証1部上場企業のIR担当として働いていたことがあります。
※IR=インベスター・リレーションズの略。投資家向け広報。
現在はフリーランスとして活動していますが、当時IRで働いていた時の裏話なんかをお話ししたいと思います。
前回の【IRの裏話】我が社で株主優待を新設することになったワケの記事に続き、今回は株主優待の内容はどうやって決めているのかについてお話したいと思います。
カラス
ことり
当時、我が社では株主優待を新設することが決まり、IR担当の私はゼロから株主優待についての情報収集をはじめました。
その時の裏話を交えながら、株主優待品を決めるまでの経緯や最終決定したときの理由、惜しくも落選した候補の商品たちについてなど、お話させていただきます。
この記事はあくまで裏話であって、会社公式のものではありません。ですので、「どの会社のことかな?」など詮索することはご遠慮ください。
株主優待の内容はどうやって決めるの?
会社によって株主優待の決め方は色々ですが、主に3パターンに分けられると思います。
- 自社商品
- 経営者の意向
- IR担当が選定
食品メーカーなど、消費者向け商品がある会社は、基本的には自社商品がそのまま株主優待品になってますよね。飲食店やアパレル系の会社は、お店で使える割引券が多いです。
「自社のファンになってもらいたい」「自社商品を食べてほしい・使ってほしい」などの想いが表向きですが、IR担当から言わせると予算的に安上がりで済むからだろうな、と感じています。
カラス
ことり
株主優待って、ほぼ「プレゼント」みたいなもんだから、できるだけコスパよくしたいってのがIR担当の本音!
自社商品ならかかってくるコストは主に原価になってきますから、普通に商品を調達するより安くて済みますからね。
次に、経営者の意向で決まるパターン。
分かりやすい例をお伝えすると、当時、「陶器」を株主優待品にしている会社がありました。○○焼き、みたいなちょっとした高級品のやつ。
ことり
って当時の私は思ってたんですけど、ゆくゆく調べてみると、かなりプライド高めな経営者の方なようで…(言い方が悪くてごめんなさい)。
ことり
カラス
ちょっと極端な例ではありますし、その会社が今も同じような株主優待をやられているかは分かりませんが、優待品にこだわりを見せる経営者がいらっしゃるのは事実ですね。
IR担当が株主優待品を選ぶ基準
じゃあ、IR担当はどういった基準で株主優待品を決めるのか?
私の経験上、以下のポイントから優待品の候補を決めていきました。
- 個人株主のファンを増やしたい!
- 個人株主の方に喜んでもらえる、人気の株主優待品はどんなものか?
- 他社が実施してる優待品にはどんなものが多いか?
- 優待品としての価格は適正か?
こんなことを考えながら検討していきました。
また、株主優待品を取り扱う会社、というのがいくつかあるので、そこに声をかけて話を聞く、ということもしましたね。
カラス
ことり
QUOカードを株主優待品として検討してみた
株主優待で、QUOカードがもらえる会社ってめちゃくちゃ多いでしょう?
あれ、なぜだと思います?
金券だし、コンビニで使えるし、俺はモノよりQUOカードのほうが嬉しいね!
カラス
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実際、そう考えている株主さんも多いから、優待品としてQUOカードを選ぶ企業も多いんだよね。
でも、QUOカードには会社側にも大きなメリットがあってさ…
一番の理由は、予算です。
株主優待のQUOカードって、500円分のところが多いですよね?これって、株主優待品としてはかなり「安い」価格なんです。
株主優待が好きな人なら分かると思うのですが、優待品がモノの場合、1500円相当のお菓子とか、お米5kgとか、3000円相当のカタログギフトとかが多いですよね。
株主の方にお渡しするモノとして、そんな低価格のものはお送りできませんからね。送料もかかりますし。
JCBやVISAなどのギフトカードでも、1000円以上が普通です。
でも、株主優待を実施する会社側としては、「個人株主のために優待はやりたいけど、そんなにお金がかかるのは負担が大きい。まずは少額から始めたい。」ってのが本音です。
そんな中、QUOカードなら500円という低価格で発行できるし、届けるための配送料も大してかかりません。そのうえ株主に人気とあれば、選ばない理由がないでしょう。
自社商品もなく、予算に限りもある会社にとっては、まさにありがたい優待品というわけです。
カラス
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カラス
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ちなみに、QUOカードを優待品にするときは、もともとのデザイン以外に、会社のオリジナルデザインを発行することも可能です。
もちろんお金はかかりますが、オリジナルデザインにすることで、自社の株主優待品って雰囲気が出ますよね。あくまで雰囲気ですけどね(笑)
QUOカードのココだけの話
ことり
芸能人を広告塔として起用している会社さんって多いじゃないですか。で、そういう会社は、その芸能人のQUOカードを作るだけでかなり人気が出るそうです。
で、特に人気が出るのが「ジャニーズ」系の方々のQUOカード。
ジャニーズのタレントさんって、写真の使用がほんっっっとうに厳格なんですよ。何かしら販促品を作るってなっても、何を作るのか、どういう目的で使うのか、どこに配るのか、などめんどくささがハンパない。
以前、某ジャニーズさんの写真で販促品のクリアファイルを作らせてもらえた会社があったんですけど、契約満了と同時に、そのクリアファイルは在庫全てを回収させられたそうです。営業マンのカバンに入っているものまで、厳しく回収されたそうですよ…
でも、QUOカードならジャニーズ事務所から簡単にOKがもらえるらしく、それぐらい信頼度の高い商品だよってことで「芸能人で優待品を作るなら、ぜひQUOカードを!」って営業されたんですよね。
ことり
カラス
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それに、会社の詮索はしないって約束でしょ!
カラス
我が社が選んだ株主優待品は「食品」
カラス
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菓子か?特産品か?はたまた調味料とかか?悪いけどまったく魅力を感じないね。
カラス
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まぁ、そこに至った経緯を聞いてよ。
IR担当の私がいろいろと情報収集をして、最終的には候補をいくつかに絞りました。
それぞれを優待品とした場合にかかってくる費用も計算して、社長と上司と私の3人で会議をしたんです。
確か、人気がある優待品の中で、他社が採用している上位5つぐらいを提案したと思います。
一番多かったのは自社商品・サービスで、次がQUOカードを含む金券類、その次が食品系とかでした。(ちょっとうろ覚え…)
ことり
が、社長としては「食品がいいんじゃない?」ってなって。
その理由は、前回の記事でご紹介した株主優待新設の経緯にも通じるところがあるのですが、業績が悪い間も支えてくれていた株主の皆さんに感謝の気持ちを伝えるとするなら、モノが届いたほうが喜んでもらえるのではないか、と。
当社の株主様の特徴として、長期保有していただいているご年配の方が多いため、親しみのないQUOカードより喜んでもらえるのではないか、と。
QUOカードを使う機会のない地域に住んでる人もいるだろうしさ、と。
食品なら、届いたらとりあえず食べてもらえるだろうしね、ってことだったんですよ。
カラス
ことり
実際、株主構成を確認してみたら、かなり長期保有してくれてる人が多くて。
より多くの株主に喜んでもらうためには、我が社にQUOカードは合ってないな、って思っちゃったんだよね。
こんな経緯で、我が社の株主優待品として決まったのは「食品」でした。
食品の具体的な内容は念のため伏せさせていただきますが、より多くの方に喜んでもらえる物を、予算や配送方法などを踏まえて最終決定しました。
のちに調べてみたところ、QUOカードを優待でもらっても嬉しくない、使い方が分からない、って思う人も一定数いるみたいで、勉強不足を痛感…。
こんな感じで、IR担当が優待品候補を選び、メリットデメリットを比較して、最終的には経営者の意見を取り入れて決定、って流れで株主優待品が決まりました。
ことり
カラス
ことり
株主優待の決め方はいろいろ
ここまでの話は、あくまで私が働いていた会社のお話です。
とんでもない大企業とかだと、もっと合理的にやっていたり、指標を設けて判断しているところなんかもあると思います。
どんな株主優待をやっているか、どんな内容になっているか、だけでも会社の「色」がでますよね~。
カラス
ことり
カラス
ことり
あ、そろそろ息子のお迎えの時間が…(退出)
カラス
ごめんなさい、今回の話もついつい長くなってしまって…
別の話題については、また次の機会に。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次の記事を読む>>【IRの裏話③】株主優待の改悪と廃止を語る。事前に気付く方法は?
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