ことり
東証一部上場企業でIR担当をしていた私が、今回は「IRへの問い合わせ」について企業IR側の視点でお話ししていきます。
カラス
ことり
IRの仕事というのは多岐に渡りますが、絶対に逃れられない業務のひとつが「IRへの問い合わせ対応」です。
IR宛てには、日々たくさんの問い合わせが届きます。個人投資家の方から「御社の業績について、ちょっとお尋ねしたいのですが…」なんてご質問をいただくことも。
でも、「電話する勇気がない…」「塩対応されたらどうしよう…」とモヤモヤしている人もいるんじゃないでしょうか。
そこで、IRへ問い合わせをする前に、ぜひ知っておいてほしいIRのことをブログにまとめてみました。
・どんなふうに問い合わせればいいの?
・どうしたらスムーズに質問できるの?
・欲しい情報はどうやったら聞き出せる?
・株式投資の情報収集として活用したい!
こんな疑問をスッキリさせちゃうよ!
この記事はあくまで裏話であって、会社公式のものではありません。ですので、「どの会社のことかな?」など詮索することはご遠慮ください。
①あまり歓迎していません
ことり
しょっぱなから全否定かよ!
カラス
ことり
どんな会社でも、上場していれば「IRお問い合わせフォーム」「IR宛ての電話番号」などなど、IRとしての窓口を設けています。
これらは、株式のこと、決算発表のこと、リリースのことなどで質問がある個人の株主や投資家の方向けの窓口です。
例えば、「決算発表はいつですか?」とか、「配当金はいつ振り込まれますか?」とか、「今期の業績について聞きたい」とか、そういった質問のための窓口です。
でもね、そういった問い合わせのほとんどに対して、私はこう思うんです。
それ、全部、公表してますから!!!
って。
IRからお伝えできることは、ホームページやIR資料にすべて書いてあります。
なので、問い合わせをする前に、まずはちゃんとホームページやIR資料を見てほしいんです。
私の経験上、「ここに書いてあるんだけどな~」って質問の多いこと多いこと。情報収集目的の方にしても、数字だけ見て問い合わせている人も多く、IR資料をちゃんと読んでくれてないんだな~と残念に思っていました。
最近では、IRページに「よくある質問」や「資料室」を掲載している会社も増えています。そこを見ると解決できることは多いと思うので、問い合わせる前に必ずチェックしてほしいです。
ことり
問い合わせなくても分かることは、そちらで解決してもらえるとありがたいんだよね。そういう意味で「あまり歓迎していません」ってこと。
カラス
ことり
ホームページやIR資料が分かりにくいってこともあるし、その時は気兼ねなく問い合わせてもらえればいいかな。
質問以外にも、IRへのご意見だったり、応援の声は随時受け付けております!
ことり
②IRが話せるのは公表している事実のみ
カラス
ことり
IRが公表する情報には、実はたくさんのルールや法律があって、内容やタイミングなどが事細かに決められています。
これは、「すべての投資家に、公平・平等に情報を届けるため」です。
すべての人に、同じ情報を、同じタイミングで公表する。機関投資家も個人投資家も異なる取り扱いをしない。これが、IRの情報発信の基本です。
だからこそ、リリース前にはIRとして何を公表するかを深く検討しています。
ですので、IRへ問い合わせをしてきた人だけに、特別な情報や公表していない事実を話すようなことは絶対にしません。他の投資家に対して、不公平になってしまうからです。
それでも「IRに電話したら、業績のこと教えてくれたよ~」なんて噂を聞いたら、それは、決算資料に書かれていることや、すでに公表されている事実をただそれっぽく口頭で伝えられただけだと思ってください。
ことり
カラス
ことり
IR資料って、どれも堅苦しいですからね。プロ投資家ならともかく、全てを読み解ける方ってなかなかいないっていうのも分かっています。
こちらとしても、IR資料を読んだ上で理解できない部分について「こういうことなんですよ」って説明することは可能です。
ただし、お話しできることは限られているのでご了承くださいね。
③インサイダー情報の質問はお断り
カラス
ことり
カラス
IRへの問い合わせで一番やめてほしいのが、インサイダー情報にまつわるもの。
例えば、こんな事項が当てはまります↓
・会社の合併、買収、M&A
・株式分割
・業務提携
・業績の上方修正、下方修正
・配当金の予想
・新製品や新サービスの発表
・株主優待の内容変更 など
これらの内容については、直接質問されても「お答えできません」「予定はありません」としか言えません。
どうにかして情報を得ようと、遠回りに聞いてみたり、言い回しを変えて質問してくる方もたまにいます。
けれど、こっちだってIRへの問い合わせは百戦錬磨ですから、なめてもらっちゃ困ります。あなたの下心なんて筒抜けです。
絶対に答えませんし、情報の雰囲気すら醸し出したりしません。
ことり
カラス
ことり
ということで、「なんか新しい情報とかもらえないかな~?」「ニュアンスくらい掴めないかな~?」と思っているそこのあなた。諦めましょう。
カラス
ことり
もしもですよ?
インサイダー情報をゲットして株式を売買してしまったら、あなたが逮捕されるんですからね?
そういう意味では、投資家の方々をインサイダー取引から守ることもIRの仕事のひとつなんですよね。
④メールと電話どっちがいい?
IRへの問い合わせには、メール(お問い合わせフォーム)と電話の2つの方法を用意している会社が多いですよね。
(問い合わせが多い大企業などでは、電話対応を廃止しているところもありますが。)
どちらの方法で問い合わせをするのが良いと思いますか?
カラス
ことり
これについてですが、まず、問い合わせ対応をする側の意見としてはメールのほうがありがたいです。
ご質問いただいた内容に対して、ちゃんと情報を確認したうえで正しくお答えできますし、やり取りの記録がしっかりと残りますから。
なにより、こちらの都合の良いタイミングでお返事ができるので、通常業務への支障が少なくて助かる!
というわけで、IRへの問い合わせはメールのほうが喜ばれます。
一方で、「IRへの問い合わせは電話のほうがおすすめ!」と言っている方のご意見もよく分かります。
メールだとお返事に数日いただくこともありますが、電話ならすぐに返事がもらえますからね。
それに、IRの担当者と直接話すことができたら、話の内容はともかく満足感は高くなるはずです。
カラス
ただ、その満足感は「情報を引き出すことができたから」ではないと思うんですよね…。メールでも電話でも、もらえる情報は同じはずです。
じゃあ、なぜ電話がおすすめされるのか?
これについて、電話のメリットを「担当者の話す雰囲気で、会社の雰囲気が分かる」と言う方がいます。
本当にそうでしょうか?
若い女性の担当者なのか、年配の男性の担当者なのか、丁寧に話すタイプなのか、フレンドリーに話すタイプなのか、問い合わせ対応に慣れている担当者なのか不慣れな担当者なのか…。
個人的には、「担当者の雰囲気=会社の雰囲気」と受け取る方がよっぽどリスクがあると思うんですけど、どうでしょうか。
ことり
私は、株式投資の情報収集目的で問い合わせをしてきた個人の方に対応するとき、意識していたことがあります。
それは、いかに情報を与えずに満足して電話を切らせるか、でした。
カラス
ことり
例えば、こんな問い合わせがきたとします。
「IR資料を読んで、今年の業績について知りたいんですけど、○○以外に何か影響とかあるんですか?」みたいな質問。あきらかに情報収集目的ですよね。こういうときは・・・
・まずは、「しっかりと読んでくださってありがとうございます」という感謝から始める
・で、すでに読んでるのは知ってるけど、あらためて資料に書かれていることを話す(口頭で言うと、さも書かれていない情報のように聞こえたりするので)
・愛想よく返事をして「会話してる雰囲気」を積極的に作る
・「答えられません」のように断言するのではなく「う〜ん、それについては資料に書いてあることが全てなので…(黙る)」みたいな感じで、相手が諦めるのを待つ
と、こんな感じの対応をしていました。
私は「せっかく問い合わせをしてきてくれたんだから、気持ちよく終わらせたい。でも、言えることは限られている。もちろん、会社には良い印象を持ってほしい」って中で、こういう対応をしてました。
このような対応をしておくと、投資家としては「IRの担当者がいい人だった!」「この会社は良い雰囲気だ!」「電話して良かった!」ってなるわけです。(実際、Yahoo!掲示板にそう書かれたことがありますw)
でもね、このやり取りが気持ちよくなって、何度も電話してきたり、もはや雑談するのが目的なのでは?って人も出てきたりします。
ことり
あくまで、数ある上場企業の中の1社の話なんですけどね。
このあたり、あまり書きすぎると反感買いそうなのでこの辺で。
とりあえずIRとして言いたいのは、メールでも電話でも情報収集手段としては同じだよってことです。
後編へ続く
いろいろと書かせていただきましたが、IRへ電話することは悪いことではありません。
そこで、後編では、IRへ問い合わせをしてみたい人向けのアドバイスを書きました。
合わせて、IRの問い合わせに関するとんでもない事例もご紹介しています。ぜひ続けて読んでみてください。
続きはこちら>>【IRの裏話⑦】IRへ問い合わせる前に知っておくべき9つのこと(後編)
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