ことり
私は以前、東証1部上場企業のIR担当として働いていたことがあります。
※IR=インベスター・リレーションズの略。投資家向け広報。
現在はフリーランスとして活動していますが、当時、IRで働いていた時の裏話なんかをお話ししたいと思います。
今回は、IR業務のひとつとして担当した「株主優待」についてです。
カラス
ことり
カラス
ことり
当時、私の会社では株主優待を実施していませんでした。ところが、私がIR担当になってすぐに株主優待を新設することになったんです。
その時の裏話を交えながら、なぜ株主優待をやることになったのか?新設の経緯などをお話しさせていただきます。
この記事はあくまで裏話であって、会社公式のものではありません。ですので、「どの会社のことかな?」など詮索することはご遠慮ください。
株主優待をやる目的
企業が、株主優待をやる目的はたった1つです。
「個人株主を増やしたい(個人株主の数を安定させたい)」
これに尽きます。
細かい話をするとややこしくなりそうなので今回は割愛しますが、例えば、どこかの会社が株を買い占めて、会社を乗っ取ろうと考えていたとします。
乗っ取りを考えている悪い会社は、いろんな方法で我が社の株を買い集めるでしょう。
カラス
ことり
悪い人は考えることが一緒。現に、昔はそういうことを考える人もいたんだよ。
このとき、会社のファンである個人株主が多ければ、1人1人から株を買い取るのは至難の業ですから、結果的に乗っ取りを阻止することができますよね?
もちろん、こんなことは現実的にはほぼ起きる可能性はないんですが、それぐらい「個人株主が増えること」は会社にとってメリットが大きいんです。
ことり
だから、株価の安定にもつながったりするんだよね。
じゃあ、ことりの会社も「個人株主を増やしたい」から株主優待をはじめたってわけ?
カラス
ことり
株主優待の新設秘話 我が社のケース
私がIR担当として働き始めたころ、ちょうど会社の業績が右肩上がりに回復しはじめたところでした。
その前はちょっと落ち込んでいて、赤字のときもあったくらいです。もちろん、配当金も出せていませんでした。
業績が回復したことで資金に余裕がでてきて、人材の採用や設備投資などにやっとお金を使えるようになってきた…そんな時期でした。
突然、上司から直々にお話がありまして…
「社長の意向で、株主優待をはじめることになった」と。
カラス
ことり
これにはいちお、社長なりの理由があってね。
上司から聞いた社長の意向はこんな内容でした。
業績が悪かったときに、株主の方々にはご心配をおかけしている。
ここ数年は、本業を優先させるためにも無配にさせてもらっていた。
しかし、うちもようやく回復傾向になってきて、株主の皆さんにも少しは安心していただける状態になった。
これまでのお詫びと、日ごろから応援してくれていることへの感謝をしたい。
カラス
ことり
でも、これが嘘偽りない本当の話なんだよね~。
私、めっちゃがんばろうと思ったもん。
もちろん、株主優待をやること自体は、IR戦略としてもプラスですからやらない理由がありません。
こんなわけで、急遽、予算組みからはじまり、どんな内容で株主優待をやるか、どんな方法でやるか、を考えていくことになりました。
会社の株価めっちゃ上がるの確実っしょ。
カラス
ことり
「株主の皆様の日頃のご支援に感謝し、株主優待を実施することにいたしました」って。
あと、株主優待のご案内にも書いたかな。
どこの会社のリリースにも書いてあるぞ?
カラス
ことり
そんなこんなで。
その後、株主優待を新設するよ!って正式に公表したときには株価もけっこう上がってくれたし、喜びの声もいただけたりしたので、株主優待をやることができて良かったなぁと思います。
株主の声は会社に届いている!
どうせ、そう思いたいだけの妄想でしょ?
カラス
ことり
株主さんからの声は、いろんな形でIR担当に届いているんだよ。
我が社の場合は、
- 株主優待の申し込みハガキに、応援メッセージが書かれていた
- IR宛に直接電話がかかってきた
- IR宛に応援メールが届いた
などで、株主の方から感謝のお声や応援メッセージをいただいていました!IR活動ってなかなか株主の反応が見えづらいので、すっごく嬉しかったです。
カラス
ことり
集計作業が機械の場合でも、個人情報保護シールを剥がすのは手作業だったりするしね。必ず一度は人の目に触れるんだよ。
実際に、私はひたすら個人情報保護シールをはがす、という業務をしたことがあります(笑)
長時間続けると、シールの粘着で手がヒリヒリしてくるのでおすすめしません。
たまに、「IRへ物申す」みたいな人が書き込んでるし。
カラス
ことり
リスクヘッジとしてチェックしてる会社もあるかもしれないけど、そんなに多くはないと思う。
私は、今でこそただの個人投資家だから見たりするけど、IR担当のときはあえて見ないようにしてたよ。
カラス
ことり
掲示板は、どんな人が書き込んでるか分からないでしょ。株主なのか、ただの売り煽りなのか。
そういう「よく分からない意見」に振り回されるのも良くないなって思って。
何か会社に言いたいことがある人は、身分を明かして直接IRに連絡してくるしね。
IR宛には応援の声だけじゃなく、厳しい意見をいただくことも多かったし、全ての株主の方の期待に応えられないのは歯がゆかったけど、今となっては良い経験だったなと思います。
株主優待品はどうやって決めてるの?
さ、株主優待の話の続きを話すのだ!
カラス
ことり
えっと…新たに株主優待を始めることが決まったから、まずはどんな優待品にするのか、ってとこから検討したんだけど…
カラス
ことり
カラス
まだまだ株主優待に関する裏話はあるんです。
優待品の内容を決める経緯、検討にあがった候補、なぜQUOカードが株主優待品として選ばれるのか、などなどお話ししたいことはたくさん!
こちらについては、長くなってしまったのであらためて別の記事に書かせていただこうと思います。
もっと腹黒い話を期待したんだけどな…
カラス
ことり
社長はああ言ってたけど、本音のところは「株主にいい顔したかった」んじゃないかなって思ったりもしたよ。
カラス
ことり
実際、株価が下がり過ぎてクレームとかもきてたらしいし。
カラス
ことり
「不満もあるだろうけど、とりあえず優待やるから許してね!」みたいな。
カラス
ことり
業績が回復したからって、株価が一気に上がるわけでもないし、配当金だっていきなり高額を出せるわけじゃない。
だからこそ、株主優待っていう方法をとったのかな~って思ったんだよね。
ま、私の勝手な見解だけど。
カラス
とりあえず、今回はここまで。いかがだったでしょうか?
みなさんにとって、企業のIR戦略って、いろんな指標や基準値をもとに、もっと合理的に考えられていてるんだろうって思われてるかもしれません。
でも実際は、IRこそ企業の「色」が強く出る部分であり、会社によって多種多様な戦略がとられているものなんじゃないかなって思います。
少なくとも、株主優待をやっている会社というのは、個人株主のことを考えてくれてる会社のはずです。(個人株主を軽く見ているような会社は、そもそも優待なんかやりません。お金も手間もかかるから。)
IRって奥が深いです。ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
次の記事はこちら>>【IRの裏話②】株主優待の内容はどうやって決めてるの?
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